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□飲んでも飲まれるな、そもそも飲むな
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「うーわぁー…」
変な声が零れた。
ロックオンが刹那の部屋を訪れたのは夜。
夜といっても宇宙だから地球に合わせた夜。
翌日のトレーニングプランの変更を伝えるためにドアを開けたのだが。
「…んだよ、これ…・え?」
目の前に広がる光景、刹那に割り当てられた部屋なのだから刹那がいるのは当然だ。
問題は刹那の腰周りにしがみ寝入っているティエリアだ。
ベットの上、小柄な二人といえ二人も乗れば狭く、重なるような格好となる。
ティエリアが落ちないように回された手はしっかりとニットを掴み、引き寄せているようにも見える。
そして開いた手は優しく背中を撫でている。
これが恋人同士ならなんら問題はない。
しかしこいつらは違う。犬猿の仲の水と油、氷と炎。二人が会えば此方が気まずい空気を味わう仲なんだ。
何故ここにティエリアが、とかそんな初歩的な疑問すら解決しない。
そもそも分るわけないだろう。ああわからないさ!
そんな独り頭を抱えようとした時だ、問題の片割れが口を開いた。
「ロックオン。おかわり」
はい?
「ロックオン!おかわりっ」
珍しく声を荒げおかわりと言い出し手に持ったグラスを掲げる。
「俺はまだ飲む!」
つまり酔っていた。
「って、お前まだ未成年だろうが!?なにやってんだ!」
慌てて手からグラスを取るが当然ながら中身は空、しかし強いアルコールの匂いが何を飲んでいたのか確証させる。
改めて見わたせば部屋の隅に転がったボトルが数本。よく知ったそれはお世辞にも弱いと言えないもの。
これらを二人で空けたとすると酔っていて当たり前だ。
現に刹那の様子がおかしい。そもそもティエリアが抱きつくなんて行動を取るのもおかしいんだ。
ああ酔っ払いめ!
「俺はガンダムだ!」
「はいはい!わかったからぁって何処に隠し持ってたそのボトル!」
意味不明な言動と何処からともなく現われた新しいボトル。
取り上げようとすれば野生の獣のように威嚇をされる。
動きにくいのか膝の上に重なるティエリアを抱き寄せてボトルを開ける。
早速一口飲み、次に意識のないティエリアの口へボトルを押し込む。
カチと歯に当たる音がして流し込まれる。飲みきれないアルコールが顎を伝った。
「…ん、ぁ」
その時零れる声がなんともエロい、と言うか来るというか。
こう、下半身に直撃…
「って、おい刹那!? 何やってんだやめろって!」
我に返り慌てて取り上げる。中身は殆どシーツに吸い込まれていたが止めないといけない。
一番年上だとかそんなことではない、これはいけないんだ色んな意味で。
「な、もう飲むな、もう飲むな!頼むから」
必死に言っても理解すらしてくれない。
思わず助けてくれと此処にいないもう一人のマイスターを思う。
思いが通じたのかはわからない電波な彼の発信か、さり気無く電波っ子な刹那が何かを受信した。
「てぃえりあ、やまぶどうがなっている。でもリンゴだ」
両手で大事に掴んでいたティエリアを放り出した、無残にもベットから落ちて頭を打つ音がした。
唖然と刹那の奇行を見守るが、立ち上がり、数歩彷徨うとその場に崩れ落ちた。
落ちる瞬間にガンダムと呟いた刹那は流石に執念深い。
静かになった部屋には大人しく寝ている刹那と意識のないティエリアと俺だけ。
そして、俺はなにもなかった、見なかったことにする。
こいつらだって覚えていないだろうさ。
静かに部屋を出て何事もなかったように俺は帰った。
ああ、明日どうなってもしらねぇよ!
勿論知らないといっても誰も攻めない、そう思った。
しかしなんだ、目の前で不機嫌に睨んでくる二人は。
「頭が痛い。そしてなぜ俺が刹那の自室にいたのか説明しろ、ロックオン・ストラトス」
「気持ち悪い。そもそもなんで俺の部屋にティエリアがいた、知っているはずだロックオン」
二日酔いと、ティエリアはぶつけた頭もあるのか、体調もすぐれず更に不機嫌になる。
残念なことにおかわりを要求した刹那は俺がいたことを覚えていたらしい。
ティエリアに問い詰められて俺がいたといったのだろう。自分はそれ以外何も覚えてないくせに。
目の前で自分の声に呻くは今にも殺さんばかりに睨んでくるやら。
とりあえずミス・スメラギにアルコール管理の徹底を進言しに行こうと誓った。
足元でハロが貧乏くじと言うがまさにその通りだ。