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□ワイングラス *
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「嬉しいよ、君が来てくれて」

そう言ってビンテージワインを傾ける。
因みに俺は嬉しくともなんとも無い。
どうしてこんな堅苦しくワインを飲まなくちゃいけない、酒は酔うために飲みたいんだ。
こんなネクタイを締めて値段の分らないワインで酔えるはずがない。
溜息を飲み込んで、代わりにチーズをつまむ。

マイスターの中で飲めるのが俺だけだったのが敗因だった。
世界的犯罪者だと言うのにお酒は二十歳からなんて法律守らなくてもいいだろと思う。
14から普通に飲める国もあると言うのに、それなら刹那もアレルヤも来れたはずだ。
そして一番ムカついたのがティエリアだ。何が年齢不詳だ、なら俺の代わりに此処に来いってんだ。
ミス・スメラギも良いものが飲めていいじゃないと言って来るし。思い出すと腹が立ってくる
考えに集中したせいか、目の前で動く気配に気が付けなかった。

「不機嫌だね、美味しくなかったかい?」

テーブルを挟んでいたはずの男は俺の直ぐ隣にいた。
「どうしたら君は喜んでくれるのかな」
近いと思った、その綺麗な手がこめかみに触れて髪をかき上げられた。
「え、いや」
慌ててもなにも言葉が出てこないのは分っている。
それでも慌てる、そんな距離。
「笑った顔も好きだが、困った顔もそそるね」
俺の髪を指に絡めて、そんなことを真顔で言う男から逃げ出したくなる。
なにが悲しくて年上の男にそんなことを言われなくちゃいけないんだ。
そりゃ昔は色々と言い寄られることもあった。もちろん全員返り討ちにしたが。
しかし俺はもう24だ、可愛いからという理由ではすまない。
身を引くと引いただけ近付く男。いい加減にしてくれと思う。
「申し訳ないが俺にはそうゆう趣味はない、退いてくれませんか」
出来るだけ丁寧に、それでもしっかりと意思は伝えた。
いくら相手が偉かろうと自分の貞操の方だ大切だ。
すると手が離れ、底に少しだけ残っている俺のワイングラスを取り上げた。
「ああ、それはすまなかった。もしかして初めてだったかい?」
その少しのワインを口に含んだ薄い唇が俺のそれと重ねられる。
謝罪のあとにこの行為、信じられないと目を見開く。
軟らかく濡れた舌がきつく閉じた口を嘗め回して行き、感覚が集中するのが分る。
目を閉じるとそれは余りにもリアルで泣きたくなった。
「っ、やめ…」
ぬるいワインが咽喉を通っていくと髪を強く引かれた。
「大丈夫だ、私はやさしいからね。安心していいよ」
口付けがいっそう深くなって息が出来ない。もちろん反論することも出来なかった。

「安心して、いい子だ」

穏やかな声で子供に言い聞かせるように言う男は決して優しい人じゃない。
これから行われようとしている行為は一方的なもの。
同意もしていないただの強姦、それを安心してと言われても。
考える間にも舌を吸われ、堅苦しさを現したネクタイは解かれ首に掛かるだけとなっていた。

ああ、頭いてぇし…、二度と来るもんか。

心に誓った。
堅苦しい空気はもうなくてあけたワインが今頃になって廻ってきたようだ。
ならなお更酔うための酒が必要だ、半分程残ったワインボトルに手を伸ばす。
男が笑ったが気にしない、そっちが勝手にやりだしたんだ、俺も勝手させて貰うさ。

諦めともいえる。
その男に身を許すなんて。





+*+*+
ドロロクだと言い張ります。
最初はもっちりやる予定でしたが踏み止まり。15サイトだからね!!


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