*Shiki* 4巻

□第92話
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 不意に違和感を覚えた。まるでグミを引っ張られるかのような感じだ。
 ハルキがゆっくりと目を開けると、シュウがグミの反対側を食べているところだった。


ハルキ「ちょっ……待てや! ポッキーゲームの原理じゃないか!」


 ハルキは反射的にグミを離した。


女性「名付けて『運命の赤い糸グミ』さ。徐々に距離を縮め合うカップル。そして二人の間に距離がなくなったあかつきにはチュッ……だ! カップル向けに考えてみたお菓子なんだけど、どうです? ドキッとしたでしょう」

ハルキ「色んな意味でドキッとしたよッ!」


 ハルキはシュウを連れて逃げるようにその場から去った。


シュウ「アタシ的にはあのお菓子は売れると思うよ」

ハルキ「さいですか……」

「そこのお二人さ〜ん!」


 また誰かに呼ばれた。魔法使いが着るようなローブで身を包んだ若い男だった。彼もまた露店の商人だろう。


若い男「祭りで売りたいものがあるんだけど、ちょっと試しに見てくれないか?」

ハルキ「チューするようなものだったらやめてね」

若い男「大丈夫だよ。この指輪なんだけど……」


 男が取り出したのは銀色に輝く指輪だった。


若い男「僕が作ったマジックアイテムなんだ。ちょっと着けてみて」


 ハルキは右手に、シュウは左手に指輪を着けた。
 次の瞬間指輪が怪しく光った。すると勝手に手が動き、お互いの手を握る形になった。


若い男「これぞ僕の開発した『シェイクハンドリング』! お互いの手を握り合い絆を深めるってもんさ。親子連れの人だと子供が迷子にならないように使うってのもアリだね」


 しかしハルキがいくら引っ張っても手は離れない。


若い男「いや、ちゃんと離れられるように設定したんだけど……。……ゴメン、ちょっとミスしたみたいだ! 効果が切れるまでしばらくそのままでいて!」

ハルキ「しばらくってどんだけだよ!」

若い男「知らない!」

ハルキ「無責任だ!」


 まったくとんだ商人だ、と愚痴りながらその場を離れた。
 がっしりと握られたお互いの手。端から見たら手を繋いで仲良く歩く恋人だが……


ハルキ「は、恥ずかしい……」

シュウ「ハルと手を繋いで散歩……」


 それぞれの思いは違っていた。
 
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