*Shiki* 4巻
□第92話
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『あな…を……絶対……死なせな……』
台詞が途切れ途切れに蘇る。
この女性は……。
『さようなら、私の子……』
気が付いたら涙を流していた。
記憶の中の女性は美しく、とても悲しそうだった。
シュウ「ハル……? あの、アタシ……何か悪いことしちゃった?」
慌てるシュウにハルキは「なんでもない」と言い、背中を向けた。
シュウ「いきなり泣いてなんでもないってことはないと思うけど……」
ハルキ「シュウは気にすることないよ」
シュウ「…………」
シュウはハルキの背中をそっと抱きしめた。
ハルキ「えっ? あ……シュウ?」
シュウ「いや、その、あの……こうしていればハルの気持ちが安心するかなぁと思って……。け、決してアタシ自身が抱きつきたくなったからとかじゃなくてねっ! つまりその……!」
ハルキ「なに?」
シュウ「ハルには……ずっと笑っていてほしいから……」
そう言った後、シュウの恥ずかしさが急に増してハルキの背中に顔をうずめた。
シュウ「ううぅ……ごめんハル……」
ハルキ「謝らないでもいいんだけどさ……」
それなら言わなきゃよかったじゃん、ということはあえて言わず、二人はそのまま夢の世界へいざなわれた。
ハルキは夢の中でもシュウと一緒にいた。
他愛もない会話をしたり、一緒に料理を作ったり、何気ない日常を共に過ごしていた。
何気ない日常だけど、何をしても楽しかった。シュウと一緒にいるだけで、なんでも楽しくなるような気がした。
そしてハルキは、改めて自分がシュウのことを好きなんだと認識した。
仲間としてではなく、一人の人として……。