*Shiki* 4巻
□第95話
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「ねえ、ふと思ったんだけど……」
一行は街道を歩いていた。
穏やかな空を見上げると平和だなあと思ってしまう。その平和がいつまで続くかわからないのに。
そんな中、ふとハルキは思ったのだった。
「俺がヘルボスのことを初めて聞いた時、ヘルボスは地獄だか魔界から来た悪魔の帝王だって聞いたんだ。でも実際のヘルボスは単なる魔族。話が全然違うんだけど」
仲間達も確かにそうだと頷いた。さすがに地獄や魔界だなんてオーバーすぎる。
「きっと魔族だということを皮肉ってわざとそういう風に伝えたんだろ。トロット島には魔族しかいないから、それを地獄って例えたんじゃないのかな」
マーサがそう言った。
そうだとしたら、何でそんなに魔族を嫌うんだろう。どの世界にも差別はあるんだなあと思った。悲しいものだ。
しかし悲しいものの他にも嬉しいものもあるわけで。
「ハル、その……て、てて手繋がない?」
「へっ? あ、うん、別にいいけど」
照れながらもまんざらでもない様子のハルキ。
それを見たマーサとクリスは二人を冷やかし、ハルキが怒って騒ぎになる。なんだか子供みたいだが、それはそれで楽しかった。
夜。
川があったのでその付近で野宿をすることにした。魚が釣れるし水浴びもできるので一石二鳥だ。
だが本当の理由は町に行って冥界からの刺客が来たら周りに迷惑をかけるかもしれないからだった。
「今日の晩御飯は……なんとっ! あのスズちゃんも絶賛した男のワイルド料理、塩焼き魚だっ!」
ハルキはただの焼き魚を高々と掲げた。こんがりと焼けた魚はとても美味しそうだ。
これをスズに食べさせたことがあった。その時のレビューは、「ホクホクとしていて塩味も良い感じに染みてますし、素材本来の味を生かした非常に素晴らしい魚ですね」と大絶賛だった。ただの焼き魚だけど。