*Shiki* 4巻
□第95話
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四人は見張りを順番に交代しながら朝を迎えた。特に何もなかったようなのでよかった。
冷たい川の水で顔を洗い、軽い朝食を取って出発の準備をする。
本日は快晴、良い天気だ。
「今日もシキの神殿を目指して頑張るべー! マーサ、今日はどの方向に向かって歩くんだい?」
「キャビチバレーを越えてニルクの町を目指す」
キャビチバレー、キャベツに似たキャビチという野菜が採れる谷。少し足場が悪いうえに魔物も現れるという場所で、以前ナツメやディラン達がエルフの集落に行く際に通った所だ。
しばらく歩くとキャビチバレーにたどり着いた。途中で魔物や冥界の刺客に襲われることはなかった。
「ハル、これがキャビチだよ」
シュウは足元に生えるキャビチを引っこ抜いてハルキに見せた。見た目はキャベツそのまんまだ。
「これにお肉とかを丸く包んだロールキャビチっていう料理はすごく美味しいの。今度ハルに作ってあげるね」
「まんまロールキャベツじゃん。でもキャベツといったら俺は豚カツの横に添える千切りのやつだなあ」
「ハル、キャベツじゃなくてキャビチだよ」
「日本での一般的な呼び名はキャベツなの」
呼び名はいいとして、四人は先へ進むことにした。
通る道は狭く、少しでも足を踏み外したら谷底に真っ逆様だ。慎重に歩かないと本当に危険だ。
幸い魔物の気配はなくて助かっている。
途中に何回も休憩を挟み、少しずつ少しずつ、それでも確実に進んだ。
雲一つなかった空には、いつの間にか雨雲が広がっていた。きっと一雨降るだろう……と思ったその時だった。
「降ってきたな」
夕立だ。バケツをひっくり返したような激しい雨が四人を襲う。
四人はずぶ濡れになりつつも雨宿りできそうな所を探した。
そしてちょうど雨宿りできそうな穴を見つけ、急いでそこに避難した。