*Shiki* 4巻
□第93話
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あっという間に建国記念の祭りが開催される日になった。城下はいつにも増して活気づいている。観光客も大勢来ているみたいで大いに賑わっていた。
ハルキは宿の自室で祭りに出かける準備をする。
シュウと繋がった手は一晩明かした時に離れた。
「ハルキ、早くしろ」
マーサが呼んでいる。ハルキは大きな声で返事をし、壁に立てかけた虹の断片を背負って部屋を出た。
ハルキ「うわあ、すごい賑わい!」
城下は祭りを楽しむ人で埋め尽くされていた。
既に屋台などが開かれており、あちこちに人の塊ができている。
城の音楽隊が奏でる賑やかな曲が城下全体に広がっていた。
ハルキ「さあさあ、どこから回っていこうか! 俺は食べ物を探したいな!」
とハルキが提案したが、
クリス「私はポーションを見たい」
クリスと意見が分かれた。
マーサ「俺はどっちでも構わないが……」
クリス「じゃあマーサ王子様はポーション派で」
マーサ「なにッ?」
クリス「ハルキ君はシュウちゃんと一緒に見て回ったら?」
ハルキとシュウは顔を見合わせ、そうすることにした。
クリス「正午にパレードがやるらしいから、その時になったら改めて合流しましょう」
ハルキ「オッケー! じゃあまた後でね二人とも!」
ハルキとシュウは広場に向かった。広場は円形になっていて、その周りに並ぶようにたくさんの飲食店があった。広場の中央には巨大な噴水があり、それを囲むようにたくさんの椅子とテーブルが規則的に並べられている。
ハルキ「いっぱいあるね。シュウは何か食べたいものある?」
シュウ「ハル」
ハルキ「はっ?」
シュウ「いや、えっと、あの〜、そうじゃなくてね、お寿司!」
ハルキ「お寿司はさすがにないっしょ、異世界だし」
とりあえず広場を一周して目立ったものを買うことにした。
二人が買ったのはドーナツとクレープとハーブティーだった。いきなりおやつ系だ。
椅子に座って食べようと思ったが、どこを見ても空いている席は見当たらなかった。
しかし辺りを見渡したらちょうどいい高さの段差があったのでそこに座った。