*Shiki* 4巻

□第97話
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 ハルキは久しぶりにパーサ村までやって来た。
 ソンチョが村長の和やかな村、そしてハデーンと戦い精霊と初めて会話を交わした所。ナツメとディランの住んでいた村。
 その村が……、

「なくなってる……?」

 建物は崩れ落ち、人っ子一人いない荒れ地と化していた。
 ナツメはエル達政府の人間の協力によってある程度復興したと言っていた。かと言って、ナツメが嘘を言う筈がない。
 何故こんなことに……?

「魔物にでも襲撃されたのかしら? そうだとしたら、一体何故……?」

 クリスはかつて民家の壁だった石に触れた。軽く触れただけなのに砂のように崩れ落ち、風に流されていった。
 そして微かに感じる魔力。どこか神々しい雰囲気と禍禍しい雰囲気の両方を感じ取ることができた。

「『聖』と『闇』の魔力かな……。精霊さんの力を借りた俺ですら足元に及ばないレベルだよ……」

 一体何者がこの村に現れたのだろう。
 これ以上ここにいても何もわからないので、とりあえず目的地であるシキの神殿へと向かうことにした。



 名前も知らない木、見たこともない昆虫。
 鳥のけたたましい鳴き声が辺りに響き渡り、どこかで魔物の遠吠えが聞こえる。
 ここは……、ここは初めて自分が来た場所。携帯電話が使えず、助けてくれる仲間もいなかった。
 巨大なトカゲの魔物に追われたことも覚えている。
 あの頃の自分は弱くて臆病者だった。
 しかし今は……、

「ハル、後ろからトカゲの魔物が――!」

 こんな見かけだけの奴なんか、敵じゃない。

「……昔の俺と一緒にしないでよ」

 ――虹の断片を突き立て、一気に引き裂く。
 自分は強くなった。ある程度の度胸もついた。
 でも……何故だろう。みんなには言ってないが、最近魔物を倒す度に不安感が募っている。
 殺戮に駆られる気持ち。
 押さえきれない衝動。
 自分は……狂っているのか?
 
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