*Shiki* 4巻
□第98話
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目を覚ますと自分は適当な所に寝かされていて、両手両足共に紐で雁字搦め(がんじからめ)にされて動けなくなっていた。
「……起きたか」
横にはイリルが座っていた。ハルキに足を刺されたので、足に布の巻きつけて止血している。
「イリルさん、さっきは本当にごめんなさい……。でもなんで俺を紐で動けなくしてるの?」
「元々殺し合いのつもりで勝負を挑んだんだから気にすることはない。まあ……仲間に手をかけようとしたのは謝るべきだと思うがな。あとそれをやったのもお前の仲間だ。また襲われるのは勘弁だもんな。でももう大丈夫そうだからとりあえず紐はほどいてやる」
ハルキは深いため息をつき、すぐに何かを思い出したように顔を上げた。
「そういえばみんなはどこに行ったの?」
「男と眼鏡は神殿の中へ様子を伺いに行き、エルフは薬草を探すためその辺りをうろついている。どっちもいなくなってから三十分は経過している」
「ふぅん。待ってれば戻ってくるよね」
「そんなの私が知るか」
しばらくしてシュウが戻ってきた。薬草の束を右手に握っている。
「あ、ハル……」
「シュウ。あ、あのさシュウ、さっきはそのー……」
「……イリルさん、薬草持ってきたから傷口見せて」
シュウはハルキを無視し、イリルの怪我の手当てを始めた。
ハルキは呆然とした。
「アタシの治癒魔法じゃ完全に治すのは無理な傷だから、この薬草をすりつぶして塗って……と」
「痛っ……! かなり染みるな……」
「我慢してね」
シュウは怪我の手当てを終えると、膝を抱えて顔を埋め込みながら座った。何一つ喋らず黙っているので近寄りがたい雰囲気があり、ハルキは話しかけることができなかった。
やっぱり自分がシュウにまで手をかけようとしたのがいけなかったのだろう。今更ながら胸が締め付けられる思いがする。