*Shiki* 4巻

□第99話
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 今度は大広間に出た。
 中央に巨大な燭台があり、さらにその四方にも小さな燭台が立っていた。火は灯っていない。
 広間を見渡したが来た道以外の通路はないようだ。

「行き止まりかな? まあなんとかなるか……」

 ハルキは一人言を呟きながら巨大な燭台を調べた。今までに使われた形跡はないようだ。
 続いて小さな燭台も調べてみたが、こちらも特に何も怪しいものはなかった。

「精霊さん、何か知らないの? 精霊さんの壁画があるぐらいだから何かしら知ってるでしょ」
『知ってるには知っています。しかしハルキ、貴方一人では何も起きません』
「なんでよ」
『他の子孫も来ているのなら全員が揃うまで待ちましょう。まずはそれからです』

 ハルキは適当な所に寝そべって目を瞑った。

 聞こえる、穏やかな風の音が……。
 感じる、空気の流れを……。

 なんだろう、この場所はとても心地良い。

「あれっ、ハルキ?」

 自分を呼ぶ声を聞きとっさに起き上がった。

「マーサ!」
「お、なんだ、いつもの雰囲気に戻ってるな。よかったよかった」

 マーサは警戒して構えていたが、笑顔のハルキを見るとホッとした表情をして構えを解いた。

「マーサとクリスさんがなかなか戻ってこないってイリルさんが心配してたよ」
「へえ、あの人が心配してくれるなんて意外だな」
「で、クリスさんは一緒じゃなかったの? あとシュウも二人を追ってここに来た筈なんだけど……」
「シュウは知らないな。クリスなんだが、実は――」
「いやあぁぁあッ!」

 突然上の方から甲高い悲鳴が聞こえた。
 二人が上を見ると、何故かクリスが降ってきた。
 そしてそのままハルキを下敷きにして着地した。

「あらま、柔らかクッションかと思いきや殺人ハルキ君じゃない。あとマーサ王子もいるし」
「クリスさん……、まずは俺の上からどいてください……」
 
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