*Shiki* 4巻

□第105話
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 ハルキはどこにいるのだろう?
 シュウは必死に砂漠を歩くが、未だに行方を知ることはできず。それもその筈、ハルキは町のある方向にいるのだが、シュウはまったく違う方向を歩いているからだ。
 途中何度も見たことない魔物に襲われた。しかしその度にナツメが一人で戦い、追い払ってくれた。

「戦闘は極力わたしに任せて。あんたはヘルボスとやり合うんだから、なるべく力を蓄えておいたほうがいいわ」

 ナツメの気遣いはすごく有り難かった。持つべきものは仲間だ。
 出会った当初は互いにいがみ合っていたが、今では気の会う女友達のようなものだ。それでもたまには言い争ったりするけど、それは仲の良い証拠なんじゃないかと思う。

「――シュウ、伏せてッ!」
「……えっ?」

 シュウは言われた通りに伏せた。それと同時に獅子のような魔物が頭の上を飛び越えた。もう少し遅かったら体を引きちぎられていたかもしれない。
 ナツメはシュウが回避したのを確認すると、右手に魔力を込めた。

「不意打ちなんて卑怯なのよ!」

 右手を獅子の顔面に打ち付けた。
 瞬間、右手から紅蓮の炎が吹き出し、相手を一瞬のいちに消し飛ばした。

「ったく、女だからってナメんじゃないわよ。あの程度の魔物なんか雑魚過ぎて相手にならないわ。ね、シュウ?」
「えっ? う、うん……」

 たしかにナツメは初めて会った時とは比べものにならないほど強くなった。もはや並みの人間では太刀打ちできないほどだ。トロット島でゴセンの特訓を受けたからここまで強くなったのだろう。
 しかしその力を過信してはいけない。強くなったと言っても、ハルキを始めとする英雄の子孫達には敵わないレベルだ。それどころか、四天王達にすら勝てない。元が普通の人間だから当然か。
 
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