*Shiki* 4巻
□第95話
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「二品目っ! 王家の舌をもうならせる奇跡の料理、俺式特製煮込みうどんっ!」
ハルキはなぜかうどんも作っていた。
そしてやっぱりこれも誰かに食べさせていた。王家といってもマーサではない。ティティーだ。旅をしていた頃に作ってあげたことがあったのだ。
そしてティティーのレビューは、「このツルツルシコシコの麺は喉越しが良いですね。スープも……適度な濃さ、ホッとする味です。寒い時に食べたいですね」と褒めちぎられた。途中でスズに横取りされてたけど。
そしてそれを食べた三人もやはり大絶賛の評価を送ったのだった。
しばらくしてハルキとマーサは川へ水浴びをしに行った。
残ったシュウとクリスは焚き火を囲みながら雑談をする。
「恋人がいるって……いいわねえ」
突然クリスが呟いた。
「最近ハルキ君とシュウちゃんはやたらと仲が良いしぃ、マーサ王子だって許嫁がいるって話だしぃ。独り身なのは私だけじゃない」
単なる愚痴だった。
「アタシとハルはまだ恋人ってわけじゃ……! でも、クリスさんならすぐに素敵な人と巡り会えると思うよ!」
「慰めてくれてありがとーね、ハア……」
夜は更けて就寝時間。
ハルキは焚き火の揺らめく炎を見ながらぼーっとしていた。彼は今見張りをしているが、暇で暇でしょうがなかった。
それにしても今日は冥界からの刺客が現れなかった。何気に一日中警戒していたので無駄に疲れてしまった。
でも来ないのならそれはそれで助かる。
しかしなんだか逆に怖い気がした。
……ふと何者かの視線を感じた。近くにある茂みから妙な気配を感じる。
ハルキはゆっくりと近付いた。万が一のために備えて虹の断片を構える。
しかし何者かは素早く逃げてしまった。暗くてあまりよく見えなかったが、人影のようなものが見えた気がする。
しかし辺りは真っ暗闇に包まれていて危険だから追いかけるのはやめた。
それ以降、視線を感じることはなかった。