□空、風、音、はねうま
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「はねうま、」
雲雀は空に向かって呟いた。薄い唇が小さく動いた。キスをする時より小さく、小さく。
ゆっくりと風に流されて声は消えた。黒い学生服がひらりとなびいてディーノの視線を遮った。
「…恭弥?」
空に溶けた自分のふたつ名にディーノは首を傾げる。なんだか、まるで何か別のものを呼んだかのような綺麗な響きに聞こえた。はねうま、と。たった四文字の唇の動きに、音の振動に、捕らわれた。
「変な名前。」
雲雀は再びディーノへと視線を戻してから、風に遊ばれて着乱れた学生服をきっちりと羽織り直した。その指先が僅かに赤みを帯びていて12月の風がその小さな体には随分と堪えている事に気付く。
「跳ね馬は名前じゃねーよ…」
ディーノは視界を遮る少年の冷えた手を掴んで、少しだけ強引に引き寄せた。と、と革靴が前に出て雲雀は胸元に寄り添う形になると、視界はいっせいに広がり高い青空がいっぱいに広がった。
少年がこの手の中にいるだけで、世界はこんなにも綺麗になるらしい。



end







好きな人に呼ばれる名前はすごく綺麗。な、気がする。
雲雀の唇の動きってえろい

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