□イン ポッケ
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ピカピカに凍りついた路面。転ぶから、と彼の大きな手は少年の華奢な掌をぎゅっと握って、くしゃっと笑った。本当はすぐに振り払いたかったけど、卑怯な笑顔にほんの少しだけタイミングをずらされたので、繋がった手はこのままになる。
一歩進む度に足元からは軋んだ雪の音。太陽が白に反射して眩しい。握られた掌は暖かったけど手背は冷えた冬の風に晒されて痛かった。
ただ、それに彼が気付く筈もないと心のどこかで考えながら他愛もない会話に頷き、たまに短い言葉を返した。握ったままの掌を気にしながら。

「寒いなぁ、恭弥」
はぁっと白い息を吐き出した唇。カラカラに冷えた空気にじわりと混ざって少しずつ空に溶けていく。
不意に繋いだ掌が動いたと思えば2つの手は強引に彼のモッズコートのポケットに突っ込まれていた。
途端に近くなる距離、感じる体温。少しだけ高い位置から顔を覗き込まれた少年はいつ人に会うかもわからないこの状況に眉を寄せた。
「嫌だ。離して」
「嫌だ。離さない」
ポケットの中で握った掌を強く握り直し、大切に大切に、暖めた。



END



並盛は雪の量からしてかなり寒そう。
ディーノさんイタリア産だから寒さに弱そう。

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