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□第2話
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石川昂輝。
仁邨北高校2年1組、特進科。
黒髪に金のメッシュが特徴の、特進にしてはこ洒落た感じの男子生徒。
耳朶ばかりでなく軟骨にも空いた複数のピアス穴。じゃらじゃらと首に下げているネックレスや、無造作にはめられた幾つもの指輪。
そのどれもがシルバーアクセで、手製と言うものだからすごい。

否、こ洒落たと言うよりは行き過ぎたと言った方が妥当なのかもしれない。これがまだ亮と武乃たちのいる普通科ならば、咎められはしないだろうが。

彼はよく人目を引いた。特進にすごい格好をしているやつがいるぞ、と噂されるぐらいだ。
その癖サボり魔なせいで、めったに見れないからと言って彼が登校してくる日はC棟に多くの生徒が詰め掛ける。


阿呆らしい。
まるで天然記念物そのものではないか。

亮と同じように、昂輝に対し少なからず反感を持つ生徒は居る。
しかし彼が誰かから暴力を受けたと言う話は一度も聞いたことがない。


「いただきます」
「いた…だきま……す」

その理由は、彼が見た目に反し頭の出来が良いと言うことにあった。
特進の中でも常にトップを維持する程の、稀にみる秀才ぶり。
仁邨北高校の期待の星と称されるほど、教師たちからの信頼も厚い。
学校側としては、服装や頭髪や出席日数など、その他諸々の拘束破りをお咎め無しとしてでも、彼を抱え込みたいと思うだろう。


彼の存在を解せない生徒たちも、特別待遇の昂輝に手を出すわけにもいかず、ただ指を加えて眺めているだけという状況。
そんな中で暴力を振るおうとする莫迦な生徒もいないと、つまりはそう言うことだ。
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