ショート・ストーリー
□あの日の過ち
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僕は、あの日、大きな過ちを犯した。
もともと一人っ子の僕は、別に何でも貰えるし奪い合う相手もいないという事で不自由を感じることはなかった。
友達のギャリック、ガールフレンドのマリー。
対人関係にも不自由はないし、まあまあ頭もよかったから、それなりに幸せな生活を送っていた。
十八の秋までは。
その頃の僕は戦争を知らずそれでも兵隊に駆り出されて、家を出ていった。
マリーは僕の為にお守りを作ってくれて、ギャリックは僕とは違う国の人(僕はイギリスで、ギャリックはドイツからの異国者)だから別々の兵隊に入隊した。
完全に敵となる前にギャリックからは大切なロケットを、僕からは大切なロザリオをそれぞれ交換し、これに誓って必ず生きて返すと約束を交わした。
僕は、イギリスを出てドイツへと旅立った。
実際、戦争というのは過酷かつ無情なものだった。
僕にだって最初はためらいがあった。
敵とはいえ親友と同じドイツ人を殺すなんて。
しかし、3ヵ月もあれば十八の少年の精神をおかしくするには十分な時間だったんだ。
僕とて例外ではなかった。
赤ん坊を抱いて助けを求める母親をレイプして刃物で殺したし、赤ん坊の方は餓死するように草むらに隠した。皆、周りの大人の真似をしたらこんな残虐性が自分の中に溢れて止まらなくなってしまったのだ。
僕は、人を殺しすぎた。
人を殺す喜びを見つけてしまった。
それこそ野獣の様に。