ショート・ストーリー
□プラネタリウム
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「あぁ〜、夜ってなげぇなぁ。暇だよ暇。」
テレビもない、眠気もない。あるのは睡魔をよせつけない頑固な猛暑だけ。
猛には夢がある。
小さい頃からプラネタリウムが好きで、プラネタリウムのおじさんに会うたびに星の事を夢中で話してくれるのを見、自分も経営してみたいと夢みてきた。
宇宙飛行士を選ばなかったのはいかにも猛らしいが、理由は「勉強が面倒。」というのもやはり猛らしい。
「俺はこれで浪漫を求めるんだ!それこそまさしくロマンじゃないか!そう、男のロマンはでかいのだ!」これが彼の言い分である。
ふと、そんなことを考えてると、この狭い四畳半の部屋を広く見せる為に何ができるか、思いついた。
手作りプラネタリウムを作れば良いじゃないか!
そうすれば長い夜でも何も退屈な事はない。
星の場所だって覚えてて、作り方も大体把握してる。
後は明日必要最低限の買い物をすればバッチリだ!
そう考えると、とたんに眠気が襲ってきた。
なんて簡単な男なのだろう。
買い物を済ませてからは、信じられない程早くてきぱきと作っていった。
弱二時間程でできあがった手作りプラネタリウム。
最後の仕上げとしてありもしない穴を開けた。
「へへっ、この星の名前は・・・そうだなぁ。ネバー!ネバーだ!!」
阿呆か。
大の男がありもしない星に恥ずかしい名前をつけて喜んでいる。
単純とは、こういうのをさすのだろう。
その日から、猛にとって楽しい夜がきた。
窓なんてなくても空は拝める。多少涼しく感じる。
飽きない。綺麗だから。
「ネバー。俺だけの星なんだ。なんか照れるな。」
あの星は俺の分身。
あの星は俺の夢。
いつまでも輝き続ける光。
安心すると、人間というのは眠くなくても眠ってしまう。
その日もお休みと電気を消した。