ショート・ストーリー

□あの日の過ち
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僕は、ある重大な事に気付いてしまった。



もう、食料がない。



軍から普及されたのを上司に分け与えたせいもあり、食料が底を突いてしまったのだ。


食料がなければ飢え死にしてしまう。


上司のほうももう無いようだ。困った。


その時は気付かなかったけど、きっと幼い頃の不自由ない生活があの頃に影響していたのだろう。

僕は貰ってばかりだったから、逆に与えようとする。これが僕の性格であり、今となっては憎んでいる。





「誰だ!」
腹が減って死にそうで、水で頑張ってお腹を膨らませていた僕の前に、一人のドイツ兵が飛び出した。


相手は何か言いたげで、僕は目がかすんでいた。

向こうが腕を振り上げている!僕は咄嗟に銃で、



そいつを「ドン・・・」と撃った。ためらいもなく。



激しい息切れと、空腹感で一杯だった僕はドイツ兵の服をあさぐる。

食物、タベモノ・・・
あった!!


上司を呼び、ドイツ兵のポケットに入っていたチョコレートを夢中で食べた。


すごく、すごく旨かった。


この時すでに過ちを犯してしまったという事にも気付かずに。










「もっとないか、これでは足りん!」


必死で探した先にはドイツ兵の顔がある。




僕は目を疑った。









ギャリック!!
見間違えるはずもない!
こいつは幼い頃からの親友のギャリックだ!!!


なぜこんな所にいる?
お前は他の国には行かなかったのか?
この国を守る為に!?







僕は変わり果てた親友の手を見やった。







固く、ロザリオが握り締められ、僕を恨めしそうに睨みながら鈍く光っていた。





あれから六十一年、僕は今もあの日の事を忘れられない。



ロザリオは今も、僕を睨んでいる。



           完
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