ショート・ストーリー

□和
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「婆や、あの魚は何じゃ」
「あれは鯉にてございます」

江戸時代、とある武家の家に、とても不思議な女子が産まれたそうな。

容姿端麗で、頭もよい。
身体能力も申し分なし。
だが、どういう訳か、男のような気丈で、刀を振り回し、都では知らぬ者は一人とていなかった。
名を、沙耶と申す。


しかし、この娘、魔可不思議な所はここにあらず。


都の連中は皆、
『姫が鳥と話している』
という事を噂しておった。

どういう事だかわからぬが沙耶には昔から動物や植物の『言葉』が聞こえた。



沙耶にしか聞こえず、
沙耶としか話さぬ。


何故この様な娘が出来たのだろう、父や母も不思議に思うたそうな。



ただ、とても気さくで純粋な沙耶の事を気味悪がる者なんておらなかった。
そこも不思議の一つなのだろう。好いてくる男も少なくなかった。



家来である鞍馬 盾乃助も例外ではなかった。





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