ショート・ストーリー

□おめでとうございます!
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ある日、お城への観光客が300人を達成しました。

その300人目の観光客は名もなき旅人でした。


「埃さま、300人達成、誠におめでとうございます。」

女王さまは言いました。

「ありがとうございます。
きっと貴方がここへ来たのは運命なのでしょう。」


旅人は答えました。
「埃さま、運命とは必然でございます。
これから起こること、今まで起こったこと、
全て埃さまにとって必要であり、必ず当然である事なのですよ。
ですから私がここへ来たのもまた必然ですので、埃さまが感謝なさる必要等ございません。」

少しジジ臭かったですかね、と旅人は笑いました。

「私がこちらへ訪れた事が貴方様にとってお役に立てたならば、それもまた必然でございましょう。」

「ならば、貴方がおめでとう、と言う必要も無いのでは?」

女王さまは優しく問いました。


「いいえ、私は貴方様を心よりお祝いするという宿命があるのでしょう。こちらへ来れたのも風の導き。
ならば名も無き旅人の言う台詞は、感嘆の言葉でもなく、蔑みの言葉でもなく。
このお城へいらした全ての旅人達が言いたい言葉。」


旅人は心を込めて礼をしながら言いました。
「おめでとうございます。」


それを皆を代表して言いに来ました。


旅人は、それを伝えると顔を隠して旅に出ました。



女王さまは、また他の観光客を沢山呼びました。








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