ショート・ストーリー

□五日間の花
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入院生活一日目。

妻が朝早くから店の白百合を持って会いにきてくれた。

僕は店は大丈夫なのか?
と心配になって尋ねてみたら、
『もう手入れしたから大丈夫♪』
と、元気良く答えてくれる。


そうじゃなくて、経営は・・・。
言い掛けた言葉を僕は飲み込んだ。

妻の目が腫れている。
隈も相当ひどい様だ。


僕は目の前でニコニコと笑って林檎の皮を剥いている妻のあかぎれだらけの手を握った。

格好付けて
『今までありがとうな。』
なんて言ったら、
妻は泣きじゃくりながら
『ぶゎっくっうぇっ!
ゎったしっもっぇっぐっ』
と、訳の分からない言葉を叫んだ。
40代の女とは思えない泣き様に、周りは警戒していたが、僕にはとても愛しい女性である。
振り上げる手を押さえて、僕の胸の中にスポッと収めた。


泣かせてしまったなぁ。
笑いながら強く抱き締めると、ガコッとアッパーが飛んできた。


白百合が、凛として僕達を見守っていた。






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