万感交交至る

□水と私
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 普段不思議に思う事はたくさんあるだろう。例えば、現実の矛盾や自然の流れ、時間や空間、感情変化、そして全ての理由や自らの意味…

 僕は歩いている。フラフラし、同じとこをまわったりしているのは向う場所がないわけではない。ただなぜかそっちに脚が動く。気の向く方へ。
 当然の事ながら辺りにはビルなどが建ち並ぶ。彼らはまるで巨大迷路の壁のように僕をその道に閉じ込め、圧迫感を与える。その中からはいくつもの眼球がクルクル回っていて顔や背中や頭や体中視線にさされている気分にもなる。その目に血管はないようだ。
 目の前には道がある。その辺には小道や抜道もあるし、曲り角や枝分かれした道、十字路もある。今僕が歩いているのはこの"冷たい熱気"に包まれた大通り。ここには比較的体温の低い人々の群が無表情に行き交う。僕には彼らに感情なんてものを感じる事ができなかった。たまにぶつかる氷なんか当たった事にも気付いていないようだ。
 とにかく今僕は歩いている。最近また買ったこの歩きやすくはないが見た目の良い綺麗な僕のお気に入りの靴を履いて、髪を整え、オシャレな服を着て、バックを持って。予定があるわけでもないのに完全防備で歩いている。ただ目的地はないわけではない。
 僕はある目的地そこを仮にDとしよう。僕はDという場所にに向って殆ど休むことなく、ひたすら歩き続けている。けれども信号の緑が点滅していたら小走りくらいはするが、決して全力疾走などはしてこなかった。
 最近は強い日差しもなければ、雨もだいぶ降っていない。さらに言えば、夜はあまり暗くならず夜らしくなく、昼もあまり明るくなく昼らしくない。最近少しじめじめしているのもそうだが原因は恐らくこのほんの薄くかかった霧のせいだろう。多少視界は悪くなるが日常生活に全く影響はなくいつもどうりが流れてゆく。
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