貰い物
□微熱と抱擁
1ページ/6ページ
某月某日。
みんなのアイドル、フェアリー・綱吉(…;)が風邪を引いて寝込んだ。
その途端、綱吉の周囲の人間共(特に男達)は、これ以上ないくらいに右往左往…。
心配のあまり錯乱し、過保護なほどに手厚く看病し、お見舞いも一日も欠かさず見事にこなした。(逆に悪化させたらどうするんだ;)
その息をもつかせぬ大混乱振りは、まるで天地がひっくり返ったかのような大騒ぎ。
傍から見ているものがあれば、あきれ返っていただろう。
まぁ、その甲斐あってか、綱吉の風邪は比較的早めに完治した。(奇跡的)
が、しかし。
綱吉が元気になるのとほぼ同時期に、体調を崩した男が一人いる。
それを人伝に聞いた綱吉は、取るものも取らずに慌ててその男のもとへと飛び出して行った。
☆☆☆☆☆
「千種さん!!!!!だ、大丈夫ですか!!??」
ガタンと大きな音を立て、綱吉はその男―――柿本千種の部屋へと入った。
丁度ベッドから身を起こし、本を読んでいた千種は、突如部屋に駆け込んできた綱吉を見て目を見張る。
「…綱吉?―――どうして、ここへ…」
「犬さんからメールが来て…千種さんが風邪引いたって…起きてていいんですか??具合は???」
ベッドのすぐ脇に座り込み、心配げに眉根を寄せる綱吉。
その少し潤んだ琥珀の瞳で見上げられた千種は、困ったように苦笑した。
(犬…余計なことを。綱吉に迷惑かけたくなかったから…黙ってたのに、)
綱吉のふわふわ揺れるハニーブラウンの柔らかい髪を撫で、そのまま今にも泣き出しそうな顔に手を滑らせる。
「今は…もう微熱程度だから、そんな顔…しなくていい、」
「そう…なんですか?――よかった、」
落ち着いた千種の声と、優しい笑み。それに安心した綱吉は、頬にある千種の手に自分の掌を重ねた。
「それより、病み上がりで走ったりしたら…よくない。ぶり返したら、大変だ」
綱吉の頭を引き寄せた千種が、小さな額に唇を押し当てれば、くすぐったそうに身を捩った綱吉がゆっくりと瞳を閉じる。
「あ…、ごめんなさい。―――唇、少し熱い…ですよ。千種さんも早く良くなってくださいね、」
「…そうだな、」
甘えて擦り寄る綱吉の、子猫を思わせる仕草が愛らしくて、千種は思わずその華奢な身体を抱き締めた。
…ってか、何かこの部屋の空気、いやに甘ったるくないですか???(キョロキョロ)凄い胸焼けしそうなんですが。
もしや、お二人の関係は…いわゆる恋人同士???
「え、えと…実はみんなに内緒でお付き合いしてます、」
「うん…初体験も、この前済ませ」
「ぎゃ―――ッッ!!!!!そこまで言わなくていいです!!!!!」
それはそれは…ご馳走様ですv
「…そういえば、綱吉…学校は?」
平日の午後、骸や犬もまだ帰って来てはいない。
「はうっ!!…千種さんが心配で、休んで来ちゃいました;」
しかも無断欠席。
今、鞄の中にある携帯を見るのが物凄く恐ろしい。多分、右腕や親友からコレでもかというほどにメールや着信が入ってることだろう。
「ご、ごめんなさい!!」
僅かでも千種に嫌われたくない綱吉は、後先考えてない猪突猛進な行動を、たしなめられるんじゃないかとビクビクして首を竦める。
「まったく、…悪い子、」
が、綱吉の予想に反して訪れたのは、優しい抱擁と甘い口づ………。
ぴた。
「―――千種、さん?」
「………、」
互いの唇が出会うまで、あと1cmといったところで…急に動きを止める愛しい恋人。
そのあまりにも不自然な制止に訝しむ綱吉は、至近距離にある千種の目を見つめた。