合作関係

□エヴァ、お花畑化計画
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春。
僕は東京に来ていた。

先生の所でも同じなら、父さんと暮らした方がいいとかそんな話だった様な気が
する。

暗い湿った気分だったけど、僕は東京の町並みに目を奪われた。
一言で言うと、騒がしい。


だけど僕からして見れば、楽園になるか地獄になるか、まだ分からない審判の地
である事に変わらない。


迎えの人が来ると聞いていたのに中々来ない。
僕は近くにあった出店をのぞいた、クロムシルバーのゴツいフォルムが黒い布の
上に並べられている。


東京に来たからには僕も垢抜けないと、また苛められるかも知れないな。


ふと、目の端に赤い車が映る。
迎えは赤い小型車だと聞いた、きっとこの車だろう。



「あの、葛城さんですか?」



赤い車の運転手に尋ねる。
運転手は髪の長い女性だった、サングラスをかけている。

東京の人は日差しが強くなくてもサングラスをかけるのだろうか、疑問だ。



「ああ、そうよ。あなたがシンジ君ね?」



当たっていたらしい。
キーを開けられた助手席に、少ない荷物と一緒に乗り込む。

車用の香水の匂いがして一瞬気持ち悪くなる、が、顔に出せば流石に失礼か。
やっぱ気持ち悪い。



「お父さまは、ちょっと急ぎの会議が入ったらしいわー。」



危なっかしい運転で葛城さんは此所にはいない父さんの事を言う。

仕方ないと思う、父さんは人気プロデューサーで今現在も人気の特撮物の撮影で
忙しいと聞いているから。



「そうらしいですね、いつもの事ですよ」



素っ気ないだろうか。
だけど真実だ。
仕事仕事であまり構ってくれなかった幼少時代、あの時は母さんがいたから僕は
ひねくれなかったんだな、と何となく思う。

こんな言い方をしているが父さんはけして悪い父親ではなかった、とも昔の記憶
ではそうなっている。

美化されてなければいいけども。

カバンに付いた小さなロボットの様な物のフィギュアを見る。
父さんが作った作品のキャラクター。



「あら、エヴァンゲリオンじゃない。好きなの?」


「はい!」



やっぱり僕だって男だしそう言うのが好きな方だと自負する。

それに父さんが作った作品だからだけじゃなく、このフィギュアの舞台は本当に
面白いから。
それでもやっぱり、子供向けなんだろう。楽しむ僕も子供だから、楽しいのだろ
うし。


いけない、嫌な事を思い出した。



「それでも、子供向けですよね…」


「何言ってんのよ、子供なんだから楽しめばいいでしょ?」



そりゃそうだ。
葛城さんは明るいと言うか、何と言うべきか、取りあえずそんな言い方で、運転
していない方の手で僕の背中を叩いた。

ちょっと、元気が出た気もしないでもない。


もうそろそろ父さんがいる会社に着くらしい。僕は無意識にエヴァンゲリオンを
握り締めた。








☆*:・°★:*:・°

お花畑開催
 

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