小説部屋
□ガラスの眼
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「ねぇ、その目はなにを映しているの??」
問いかけても答えは返ってこない。
そんなことわかりきったこと。
かのじょは、ただ、ガラスの眼で遠くの方を見ているだけだった。
ただ、沈黙が続く。
ただ、外の吹雪の音が聞こえるだけ。
外は、吹雪なのに中はそれに反して暖炉で暖かい。
かのじょの答えを待つのはやめて暖炉の火を見つめた。
「私の目には何が映っていますか?」
小さく震えた声で問いかけがそのまま返ってきた。
少し、驚いた。この2日間かのじょは声を出さなかったから。
「じゃあ、僕をその目に映してください。」
その答えを返さずに僕はそう言った。
「いいでしょう。そのかわりに、あのこを止めてください。」
ガラスの眼からは、涙が流れていた。
もう眼はないはずなのに。
それとも
それは
血の涙 か。