xx影の記憶xx

□モウソウヤ
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「何ぼーっとしてんだよ。行くぞ。」


「・・・あ。ごめ・・・」

言い終わる前にその人影は前に進んで行く。
その影をボクは必死で追いかける。

影は歩調を緩めるどころかどんどん速くなっているような気さえした。

実際そうなのだろう。

彼はボクのことをよく思っていない。

いつからそうなのだろうか。

ボクでさえ思い出せない。

今は遅い足を必死に必死に動かして彼の隣につくことができた。

それを彼は心底嫌そうな顔をして急に立ち止まった。

それなのに何故彼がボクの所にいるのか、多分過保護なボクの母親に頼まれたのだろう。

形だけ

形だけ

優しく装い、大人達を惑わす。

知ってる。

心の中でボクを嫌い、憎み、蔑みながら嘲笑いながら

形だけ。

「君はボクをいつか殺すよ。」

その言葉に彼は虚をつかれたような顔をした。


「・・・また、被害妄想?」

少し焦ったような顔でそう言った。

まるで、自分がそうしたいと顔に描いてある。

ボクは穏やかに笑った。

「ボクは君に殺されたって構わない。」

彼は嫌そうな顔をした。

「ウザイ。死ね。この妄想屋。」

突然走り出し、その姿は遠のいていく。

「・・・まっ・・・ウッ」

ゴッホッ・・・

ゴホ・・・

言い終わる前に喉の奥から堰があふれ出す。

苦しい・・・

止まらない・・・


ドサッ

その場に倒れこむ。

彼は気付いてるだろうが、戻ってはこない。

助けを求めても帰っては来ないだろう。
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