LOST
□イバラヒメ
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*side恭
『ねぇ。恭は王子様役やってよ。』
香から言われた言葉に当時の俺。
面倒臭いその一言。
また、寝に入ろうとした。
“王子様”というのは、中1の時の文化祭の出し物“いばら姫”の劇の役。
裏方に回ろうとしていた。きっとあいつも裏方だろうから。
どんくさいから俺がいないとすぐに泣くし。俺しか友達いねぇし。
それでも俺は好きで仕方がない。
泣くけど、泣き止んだ後に笑うと虹がかかったみたいに綺麗でとても嬉しい気持ちになるから。
俺しかみせない笑顔。
守らないと。馬鹿みたいに本気に思ってた。
『ねぇ、五月。恭の王子様見てみたいよね?』
は?
『うん。見てみたい!!恭の王子様。』
その声のする方へ顔を向ければ五月の笑顔。
好きな笑顔。
『しゃーねぇな。見てろよ五月っ!!お前がぜってぇなれない王子やってやるよ。』
『しゃー!!人気のある恭が王子なら文化祭で1位間違いなしっ!!』
『黒いよ。香ちゃん…。』
俺だけに向ける笑顔さえ見れればそれだけで良かった
のに
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