書架 3

□永遠を旅する者〜ロストオデッセイ千年の夢
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2007年12月6日に発売されたXbox360ゲームソフト『ロストオデッセイ』の 主人公の過去の話として作られたもの。

主人公はカイム。永遠の生を生きる、つまり死ねない男。
1000年の旅をしてきた不死身の戦士カイムが訪れた、「いつか、どこか」の町を舞台とした叙事詩。

『ファイナルファンタジー』の生みの親・坂口博信がゲーム『ロストオデッセイ』のために著者に「主人公の心に眠る千年の記憶」をオファー、
ゲームのキャラクターデザインを担当した井上雄彦(『バガボンド』」著者)が本書のカバー画も描き下ろしている。

永遠の命を持つ孤独な時の旅人カイムが旅の途中に訪れた町での出来事を描く。テーマは、戦争・家族・生命・過去など様々。

井上雄彦の表紙イラストに惹かれて、ゲーム関連の本だとは知らずにジャケ買いをしてしまったが、大当たりの本だった。
全ての話が数十ページの短編集なので、どこから読んでもいいし、どこでやめてもいいのだけれど、読み始めたら面白くて最後まで一気に読んでしまった。

数々の作品の中で、「人はなぜ生きるのか」ということを問い続けてきた著者が描く「死ねない男」のキャラクターは秀逸。
どの作品にも、永遠の命を持つ者の哀しみと苦悩が溢れている。
限りある生を生きる者に向けるカイムのまなざしは、時に達観したかのような冷たさもあり、慈愛に満ちた優しさもあり。
限りあるからこそ一生懸命生きることに意味があるのだと改めて考えさせられた。

主人公カイムが傭兵であるので、戦争をテーマにした短編が多いのだが、
争いの中であっても自由と平和を愛し人間としての尊厳を守り抜こうとする登場人物たちの生き方には特に感動した。

悲しい結末の話も多いが、不思議と読後感は清々しい。何年か経ったら、また読み返してみたい一冊。


2008.2.6   

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