書架 2

□小袖日記
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『別册文藝春秋』掲載の短編を単行本化。
不倫に破れて自暴自棄になっていた主人公が、雷に打たれたショックで平安時代にタイムスリップし、
「源氏物語」を執筆中の香子さまの片腕として働くことに…。
けれど、平安時代も現代も、女性たちの悩みや願いは同じだった。

卒論で源氏物語(紫の上)をテーマとした私としては、「源氏物語」と聞いて、
この本を読み始めたのだけれど………。
なんだか、文章も主人公の言動も、ちょっとノリが軽すぎて、最初は違和感を感じた。
時々使われる方言も、なんだか唐突な印象。

しかし、平安時代を舞台にしたり、源氏物語を題材とした作品はたくさんあるが、
この作品の主人公は「源氏物語」執筆のためのモデルやエピソードを探す役目を担っており、
言い換えるならば源氏物語の共同執筆者であるという設定は新鮮だった。
主人公が「源氏物語」のための取材中、事件を推理・解決していく過程は、ちょっとしたミステリーの要素もあって楽しめる。

平安時代の風俗・習慣についても、分かりやすい表現を使ったり、現代にあるものに
言い換えたりと、歴史者が苦手な読者にも読みやすくする工夫が感じられる。
しかし、残念ながら、それが作品全体の雰囲気を軽いものにしてしまったようだ。

ラスト2話は、「女の幸せ」について深く考える登場人物達の心理描写が繊細で、
前半の数話とは異なり切なく趣深い作品だった。


2007.8.7

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