書架 2

□鹿男あをによし
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デビュー作「鴨川ホルモー」で直木賞候補にも挙がった万城目学の第2作目。
前作の舞台は京都だったが、今回はタイトルからも分かるように奈良である。

精神虚弱だと決め付けられて、大学の研究室を追われた28歳の主人公。
期間限定で赴任した女子高で起きる出来事をコミカルに描く。

前作同様、物の怪が登場し、何も知らない主人公が不思議な事件に巻き込まれていくというストーリー。
物語の冒頭は誰もが知っている「坊ちゃん」のパロディであり、
登場人物の名前が「大津」「福原」「長岡」「藤原」という古の都の場所であるというのも、面白い。
前作のふざけ過ぎた印象は薄らぎ、今作では、物語の構成・脇役の描写
・ちょっとした恋愛のエピソードなど、全てにおいて旨くなっている。

大人が読んでも嫌味にならない程度の歴史や神話についての挿話が効いていて、
中高生が読むエンターテイメント小説としては、かなり完成度が高い。
前作同様、荒唐無稽な内容であるのに最後まで飽きることなく一気に読ませる。

似たような作風で森見登美彦と比較されるようだが、読みやすさという点では、森見氏よりも万人受けする。
今回の直木賞は逃したが、いつかは間違いなく受賞するだろう。

2007.7.29

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