書架 7

□はじまりの空
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岡崎真菜は17歳の高校2年生。
21歳のお姉ちゃんは就職したばかりなのに、妊娠したから結婚するという。相手は10歳年上の小林さん。
お互いの家族を紹介するための食事会で、隣の席に座ったのは小林さんの兄であり画廊に勤める34歳の蓮だった。34歳なのに大学生のような童顔の小林蓮。真菜は蓮に会うたびにどんどん惹かれていく。
17歳と34歳の恋を描いた、すばる文学賞作家による文庫書き下ろし。


文庫の裏表紙のあらすじに「一生に一度の恋に身を焦がす少女の視点で、17歳と34歳の恋を鮮烈に描いた」って書いてあって、きゅーん(笑)
河童さんのブログで見掛けて、気になっていたので早速読んでみた。初・楡井亜木子作品。
17歳の少女と34歳の男の恋……
ま、はっきり言って有り得んと思いながら読み始めたけど、あら、結構いいじゃないって感じ(笑)
主人公の真菜が高校生にしては落ち着いてるからなんだろうけど。
10代の頃って年上に憧れたりするものね。
また、蓮がかっこいいんだもんなぁ。これは好きになっちゃうよ。


落ち着いてるといっても、そこはやっぱり高校生。初対面の大人との会話に戸惑うとか、おしゃれなイタリアンレストランで緊張するとか、お姉ちゃんのお下がりのブランド物のバッグを持つ時の初々しさとか、大人の女に憧れに似た嫉妬をするとか、好きな人とのあれこれを妄想するとかっていう描写は、なんだか可愛いかったなぁ。
そして、ギャルとかヤンキーとか、変に大人に反抗的とか無気力っていうんじゃない、ごく「普通」の女の子であるのがいいのよね。親との関係がいいところも、なんだか好印象。

ただ、後半舞台がパリに移ってからの真菜の行動とか感情が、ちょっとイタかったかなぁ。イタイというか、もう本当に痛々しくて読んでいられない感じ。
でも、若い頃の行動なんて、後から考えるとみんなイタイんだけど。
恋の力は凄いなぁと思ってしまう。


それにしても、この作者の使う言葉は素敵だったなぁ。
主人公・真菜の揺れ動く心情を、ここまで丁寧に言葉で表現できるって凄い!
特に真菜が同級生に告白された時の心情を語るシーンは秀逸。回りくどい比喩という気もするけれど、この表現って、きっと他の作家にはできないだろうなぁ。
恋心って、とっても単純だけど、心の内を全て言葉で伝えようとするのは難しいんだもの。


気になる『はじまりの空』というタイトルは最後まで読むと、幸せの予感を感じさせてくれる。物語ラストの一行が大好きだ。
恋をしたくなる一冊かも(笑)


2009.5.18

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