――誓うよ。

鈍器で頭を殴られたような衝撃は、俺の体を勝手に動かした。
ロビーの自動ドアをこじ開ける勢いで手を伸ばした俺を誰かが止める。


「離せッ!!」


「落ち着け、お前教師だろ。待機室で他の教師が集まって、今は見回りに出てる教師に連絡入れてる。お前が今すべきなのは、熱くなることじゃねェ」


強く腕を掴まれて骨が軋む。その痛みのおかげか、現実が見えた。腕を掴んでいる奴を振り返って見れば、俺を呼びに来た服部だった。
ただ、どうしても思考は『行方不明になった澪』のことを廻る。何故?澪は確か、神楽や高杉と同じ班だったはずだ。……高杉が、側にいたんじゃないのかよ。


「とりあえず、行くぞ」


先を歩く服部を追って、ゆっくりと廊下を歩く。白衣のポケットに突っ込んだ手はいつの間にか拳を握り締めていた。奥歯がギリと鳴って、耳の奥に嫌な音が響く。
待機室に行くと、『またZクラスの生徒が問題を起こした』と聞こえてきそうな視線を向けられたが、それらを全部無視して壁際の月詠の隣に並んだ。


「銀八…」


「……澪がいなくなったって、どういうことだ?」


自分の中で出来る精一杯の冷静な声を作る。月詠は「わっちもさっき聞いた話だが」と前置きをして話してくれた。


「30分くらい前じゃな…、お前のクラスの高杉が『朝比奈がいなくなった』と連絡をいれた。
いつから、どこからいなくなったのかは不明。同じ班の奴は捜す、と言ったそうじゃが、一旦帰ってくるようにと指示した」


それだけじゃ、と月詠は話を終えて壁に背中を預ける。拳を解いて、ポケットの中にあるものを指で叩いた。
…なんで俺は、コレを持ってるんだろうな。俺は一体何をして…。澪が携帯を持っていれば、こんな問題はすぐに解決するってのに…。


「……っ、やっぱり俺、捜して来るわ」


冷静にならなければ、落ち着いて行動しなければいけないと思っているのに、理性よりも感情が動いてしまう。止まったら狂いそうだ、狂ってしまう。

――澪を、捜しに行かなければ。今の俺にはそれしかない。


「オイ、銀八っ!!」


焦った月詠の声を聞いて、俺の周りを他の教師達が囲む。けれど一言、「退けよ」と呟いただけで相手は真っ青になって道を開けた。そして、部屋のドアに手をかけようとしたその時、派手な音を立てて勝手にドアが押し開けられた。
雪崩れみてーに駆け込んでくるソイツら―Z組の生徒―を見て、俺は踏み出すべき足を咄嗟に引っこめる。




一言ありましたらどうぞ!



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