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□君が笑顔なら私も幸せ。
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「澤村、コレ」
ひやっと冷たい缶コーヒーの感触が澤村の頬に触れた。
「清水。何? くれんの? サンキュー」
ラッキーと嬉しそうに声をあげる澤村。
「うん。澤村、頑張ったから…」
新入部員の日向と影山の連携を生かすにあたって、菅原と田中が直接的に協力していた。
そのことを、澤村はお前らのお陰だ、ありがとう、と言った。
菅原と私は顔を見合わせて澤村の肩を叩いたものだった。

だって―。

一番二人のことを考えて、陰で立ち回っていたのは澤村だから。
澤村は誰よりも烏野バレー部のことを想っていて…。
主将だからだし当然だけれど、澤村の人柄がそうさせているのだろうなと思った。
穏やかで思慮深いけれど、誰よりも熱い。

飛べない烏をもう一度。

私は一度も口に出したことはないけれど。
想いは同じだった。

もう一度。

私もそれを澤村と菅原と一緒にこの目で見てみたい。

「俺、なんか頑張ったっけ?」
この自覚のないお人よし加減が本当に好もしいのだ、澤村は。

「澤村、私も飲みたい」

私がそう言って飲みかけの缶コーヒーに口を付けると澤村は、私の顔を二度見していた。

「何?」

「お前それ…間接、いや、いいけどさ」

澤村は一瞬動揺して、すぐ遠い目になった。
そうして呆れたような、愛おしいような目で私を見つめるのだった。



おわり
2014.6.7

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