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□ふたり、揃って
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笹塚の部屋で、弥子は笹塚にぴったりとくっついて座っている。
フローリングの床にロングクッションを引いてふたりで寄り添っているのだ。
笹塚は咥え煙草で、なにやらバイク専門誌を読んでいた。
弥子は、そんな笹塚にただくっついてココアを飲んでいる。
「あのさ…。なんでそんなぴったりくっついてんの? いーけどさ」
笹塚は雑誌に視線を落としたまま、そう聞いた。
なんでって、そんなのそうしたいから、な訳だが一応それらしい理由を考えてみる。
うーん、と弥子は首を傾げた。
ああ、そうだ。
「気温。ここんとこ気温がぐーんと下がったでしょ? そうなるとこう人の体温が恋しくなると言いますか」
「ふぅん」
ばさ、と雑誌を閉じて笹塚はそれを床へ放る。
煙草を指で挟んで、ゆったりと吸った。
表情を全く変えない笹塚に、相変わらず読めない男だと弥子は半ば感心してしまう。
「弥子ちゃんの場合、秋と言えば食欲の秋って感じだろ? だから意外と女の子らしいこと考えてんだなって思ってさ」
ああ、そういう…。
弥子は笹塚の率直な感想に「まぁ、そうですけど」とちょっと拗ねてみせる。
ぴったりくっついていた距離も座ったまま、よじよじと横にずれ、10cmほど離れてみる。
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