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私と真希が事件後に別れてから、三年が経った。
真希は埼玉県に住む遠縁の親戚に引き取られ、前と変わらぬ生活を送っているらしい。
私も前と変わらぬ生活である。
ひたすら仕事に忙殺される日々。
けれど、ふとした瞬間に真希と過ごしたあの数日のことが甦ってしまうのだ。
真希は、すっかり私のことなど忘れてしまっているかも知れない。
当たり前だ。
私は何もしてやれないのだ。
だからせめて祈った。

真希が幸せでありますように。
笑っていますように。









「会ったらいいじゃないか」
駿河は真顔でそう言った。
「解決済事件の被害者と私が会う理由なんてありません」
「理由なんてお前…。会いたいから、だけじゃ駄目なのか?」
これも真顔。
ほんの少し、心が揺れた。
「………」
私は目の前の紅茶に角砂糖をポチャリと幾つか落とした。
スプーンを親指と人差し指とで、つまんでカラカラとかき混ぜる。
「ところで、どうして今日はここなんです?」
顔を上げると駿河は一瞬、視線を泳がせた。
「いや、たまにはLも外の空気を吸ったほうがいいだろうと思ってさ」
場所を指定したのは彼だった。
頼まれていた捜査資料を渡したい。このホテルのラウンジに来て欲しい、と。
駿河は茶封筒に入った資料をテーブルの上に置いた。
「これで少しは役に立てるといいんだがな」
「少しでも情報があれば充分です。駿河さん、感謝します」
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