ssB

□僕と君の間
1ページ/2ページ

桂木弥子が自分の部屋に入り浸るようになってから3ヶ月が経つ。
たまに料理を大量に作り置いてくれたり―弥子の適量らしいのだが俺一人では到底食べきれる量ではなく、いつも途方に暮れる―他愛のない会話を交わしたり、弥子一人のときやお互い別々に過ごしたいときなどは、我が家の数少ない娯楽の品を勝手に楽しんでいるらしい。
たとえば海外の古いロックバンドのCDだとか、B級アクション映画のDVDだとか、バイクの雑誌とかだ。
そんなものを今日びの女子高生が楽しめるものなのかと一度聞いたことがある。
「自分の知らない世界のことってけっこう楽しいですよ? それに笹塚さんのルーツがわかる気がしてうれしいんです」
臆面もなくそんなことを言ったりする弥子に内心今すぐ抱きしめたい衝動に駆られたりする。
まぁでも本音を隠すのは俺にとって何でもないことなので「ふぅん」とだけ答える。

つまり、今のところ二人の間にはまだ何もないわけだ。

弥子に言わせると、この部屋は落ちつく、らしい。
「はー…落ちつくー」
そう言いながらソファにころんと横になったりする。
そうしてあろうことか、そのまま眠ってしまうこともあるのだ。
その辺の無防備さについては一度説教してやりたいと常々思っている。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ