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□僕と君の間2
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「弥子ちゃん、起きな。送ってってやるから」
身体を揺すり、眠っている弥子を起こす。
時計はすでに22時を回っている。
眠そうに眉をしかめて、んーとかむぅーとか言いながらも大きな伸びをして弥子は「はぁい」と素直に返事をした。
俺はこっそりため息をつく。
やれやれ、だ。

「あー雨降ったんだぁ」

外へ出るとむわっとした湿気が髪や肌にまとわりつく。
一雨来て、すぐに止んだようだった。
アスファルトや土が濡れて雨の匂いがする。

車を走らせる。
夜に車を走らせるのは悪くないと思う。
昼間みたいに道が馬鹿みたいに混んでいないし、エンジンの音や微かな振動が感じられて好きなのだ。
「弥子ちゃん」
「はい?」
「もう部屋には来ちゃダメ」
唐突に俺は言った。
弥子は驚いた顔でこちらをじっと見ていた。「なんでですか?」
「なんでも」

キッとブレーキを踏んで側溝に車を寄せた。
弥子に断って煙草に火を点ける。
窓を開け、外に向かって煙を吐き出す。
同時に小さくため息も。

弥子は澄んだ目で納得のいく答えを待っていた。
その視線に気づきながら、煙草が短くなるまで返答を考えてみる。
無邪気さや無防備さも、ここまで来ると罪だろ、なんて内心毒づきながら。

「そうだな。弥子ちゃんにもわかりやすく言うと、今の俺にとって弥子ちゃんが部屋に来るのは、空腹時に極上リブステーキが目の前にあるのに食べたくても、それを否応なく我慢しなくちゃなんない状態だから」
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