ssB

□恋道
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夜の住宅街は静かだ。
23:00。
私はLと違って8時間は眠らないと調子が出ない性質で、いつもならとっくにベッドの中にいる時間だ。
だけど今日は気持ちが高揚してしまって、ちっとも眠くならない。

明日から夏休みなのだ。
多少、夜更かしして明日の朝、起きられなかったとしても何ら問題はない。
Lの仕事も一段落したようだったので、散歩にいこうと誘った。
休日の昼などは「炎天下に外に出るなど嫌です」と子供じみた駄々をこねるので、最近は日が落ちて涼しくなってから誘うことにしている。
連休とか週末に限られてしまうけれど。

夜半でも気温は25度くらいある熱帯夜だった。
だが夜気は肌に心地良い涼しさだ。

「あれから3度目の夏だね」
「そうですね」
隣を歩く、白いTシャツとジーンズにスニーカーの、ひょろ長い青年のお陰で私は今、生きている。
彼が私の命を「諦めないでいてくれた」からだと思う。
死んでいてもおかしくなかった。
状況的にだけでなく、心の持ちようも。
私は父を亡くしたとき、すでに自分がどうなっても良いと投げやりになっていた。
大好きな父と母の元に行けたら。
楽だろうな、とぼんやり考えたりしていた。

でも。
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