ssB

□不確かで、確かなもの。
1ページ/2ページ

郊外。
小さな河沿いの土手を私はLと歩いている。
外は日差しがあたたかくて、まぶしさに思わず目を細める。
頬にあたる風だけが、つめたい。
さっきから、つなぎたいと思っているLのその手も多分つめたいのだろう。

「ねぇ、待って」

同じペースで並んで歩いていてもLはいつの間にか私より数歩先を歩いている。
それがいつも不甲斐なく感じる。
Lと同じ歩幅で、同じスピードで、同じ景色をみていたいのに。

Lは立ち止まる。
丁度、河のむこうを赤い電車が通り過ぎてゆくのをふたりで見送った。

「L、私ね。さいきんあなたといると苦しい」

Lは私の顔を怪訝そうに見た。
私は、この辺と手をぎゅっと握って心臓のあたりを示す。
自分でもよくわからない気持ちだ。
伝わっているのかいないのか、Lは困ったように笑う。
そうして静かに、諭すように言った。

「それは多分、一過性のものです。放っておけば直に落ち着きます」

ポンと頭のてっぺんを軽く撫でてLはまた歩き出す。

一過性…。

私は口の中で、その言葉を繰り返した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ