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□I'ts You
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雨に濡れた住宅街。
KEEP OUTの文字が書かれた黄色のテープが張り巡らされている。
そんな危ない事件現場で、俺はまた桂木弥子と遭遇した。
どうしてこの子は、こうも危ないところにばかり首を突っ込むのだろう。
警察関係者、事件関係者、野次馬を避けて俺は、ひと気のない駐車場へと彼女を引っ張って行った。
「捜査協力サンキューな。でも今後はこういう事件に関わらないように」
雨は止み、夜風に揺れるショートヘアを弥子は軽く片手で抑える。
「大丈夫ですよ。私、こう見えてすばしっこいし…」
「ああ…うん。そうじゃなくてさ、弥子ちゃんは女の子なんだから気をつけなってこと」
「大丈夫ですってば」
「いや、俺の話聞いてないだろ…」
「だって、なにかあったら笹塚さんが守ってくれるでしょ?」
普通に、さらりとそんなことを言う。
当たり前みたいに。
空が青いとか郵便ポストが赤いのが、当たり前みたいに。
答えを待つように、彼女のブラウンの瞳がじっとこちらを見つめていた。
そりゃ、彼女になにかあったら絶対に守るけれど。
俺は腕を組んで、黙って彼女を見つめ返した。
「なんですか?」
ふーっと深い深いため息を洩らしつつ、俺は弥子の頭をゆっくりと撫でた。
「いや、だから! なんなんですか!?」
弥子の顔は真っ赤だった。
でも君が悪い。
そんなに可愛いことを言うのだから。








end
2012.9.2up

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