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□約束
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二階堂真希にとって長い一日が終わった。
長くて、でも良い一日が。





「待って」
「…」
「黙って行っちゃわないでよ」

夕暮れの歩道を、
のそのそと背を丸めて彼は歩いていた。
真希は小走りに駆け寄って、その後ろ姿に声をかける。
彼は頭を掻きむしりながら振り向いた。

「…すみません。どうもこういうのは苦手です」

だろうなぁ、と真希は笑いを含んだ溜め息を漏らす。

「うん。わかってる。けどお礼くらい言わせてよ」


きっとLはこういった改まったことが一番苦手だ。



だけど、



言葉にしなくちゃ伝わらないこともあるって、真希はそう思う。





「私、あなたが居たから頑張れた。
一人じゃないから頑張れたの。

だから…ありがと」



真希は片手で、くまのぬいぐるみを抱きしめて、空いた方の手でLのTシャツの裾を掴んだ。
ほとんど無意識に。



「どう、致しまして」
真希の真っ直ぐすぎる態度に、一瞬Lは沈黙して
それから、ぽつりとそう呟いて

笑った。




「L、いつもそんな顔で笑っててね。そしたら私、この先なにがあっても生きていけると思う」



大袈裟なんかじゃなく真希はそう信じている。
自分の幸福な明日を祈ってくれた彼の幸福を真希は心から祈っている。



「解りました。
約束です」

「うん。約束、ね」



真希はTシャツから手を離すと

差し出されたLの小指に、自分のそれを絡めた。








08/3/1up

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