ss@

□きみのて
1ページ/1ページ

目の前で、とても行儀がいいとは言い難い仕草でLはオーダーしたパフェを頬張っていた。



真希は落ち着かない様子で店内をぐるりと見渡したあと、声を潜めてLに尋ねる。


「Lってこういうお店が好きなの?」
「誤解しないで戴きたいですね。私はここのパフェが気に入ったまでです」

表情を変えずに淡々とそう言うLからは、それが真意かどうか読み取れない。
真希はもう一度、店内を見渡し、
「お帰りなさいませ。ご主人様」
と可愛らしく客を出迎える女性店員(メイド)を見遣るとため息をついた。


「ところで今日はどういったご用件で?」

Lはパフェスプーンの先を口にくわえたまま真希に問う。
真希は本来の目的を思い出し、慌ててスクールバックから数学のノートを取り出した。

「数学で解らないところがあったの」

ノートを開き、マーカーでラインを引いてある部分をLに見せた。

「あぁ。これはですね…」

真希から渡されたシャープペンシルを握り、カチカチと芯を出す。
さらりと長い前髪が彼の顔に影を落とした。
不健康そうな白い肌が、さらに不健康そうに見えた。
前髪でほぼ隠れてしまっているが伏せた目には長い睫毛がちらりと覗く。

さらさらと数字をノートに綴る器用そうな手に―触れたいと思った。

「…真希さん? 聞いてましたか?」



頬杖をついて彼の顔や手に見入っていて、真希は彼の言葉を何一つ聞いていなかったことに気づいた。

「え、うん。聞いてたよ?」

Lはその回答に少しだけ口角を上げ、笑う。

「そうですか? まぁ、どちらでも構いませんが。
数学はパズルみたいなものです。解ければわりと楽しいですよ」


ぱたん、とノートを閉じ、それを真希に手渡しながらLは言う。

「そう、かな」
「そうです」

小首を傾げて言う真希に、Lは即答した。



う〜ん、と少しの間唸ってから。
真希は口を開いた。

「じゃあ数学が楽しくなるように、また解らない問題があったら教えてね」


無邪気にそうお願いすると、Lはこくりと頷いた。

「いいですよ。…ここで、でしたら」
「やっぱりこのお店好きなんじゃない」
「…気のせいです」




妙に真面目にそう否定する彼が可笑しくて、
真希はこっそりと微笑った。











08/3/4up

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ