ss@

□健全な恋の病
1ページ/1ページ

最近、私は困惑気味だ。
私は確かに頭脳で解決出来ないことが苦手分野なのだから。










あのウィルス事件以来、二階堂真希に懐かれてしまい、今日も何故か遊園地などという俗世的なところへ来ている。

目眩がする。
いや、これは感情的比喩ではなく実際に、だ。

どうやら先刻乗った、一回転するジェットコースターで三半規管をやられたらしい。

「あ、世界が回る…」

ぐらり、と視界に空が映った。
回ったのは何のことはない、私の目だ。
そのままばたんと背中から倒れてしまった。

「L!」

華奢な真希に、私を担ぐことなどできる筈もなく、担架で救護室へと運ばれた。
なんて様だろう、と寝かされたベッドの中で天井を見上げた。



「ごめんなさい…」

救護員が席を外すと、真希は小さな声でそう言った。
ベッドサイドの折りたたみ椅子に腰かけた真希の目からは絶えることなく涙がぽろぽろと零れ落ちていた。


「……………」

私は真希に掛ける言葉を失っていた。
正直、涙も苦手だ。


「ごめんなさい。私が無理に誘ったりしたから…」


そう。
最初は遊園地など冗談ではないと断ったのだ。
しかし真希に「どうしても駄目?」と言われて今回だけ特別に、と了承した。

けれど私は、本当のところ―



「だいぶ、良くなりました」

そう言い、上半身だけを起こして真希の頭に手を乗せた。
そのまま「よしよし」というように頭を撫でる。



「…今日は、楽しかったです」

ぽつり、とそう告げると真希は、はっと顔を上げて尋ねてくる。
「ほん、とに?」
「はい」

私が頷くと、真希は花のように笑う。
だから、
こんなにも煩わしくて尚且つ愛おしい感情も、

案外悪くないかもしれない。




「帰りましょうか」

ベッドから抜け出すと、私はぎこちなく手を差し出した。
それを彼女が暖かい手で握り、
厄介な想いは秘めたまま。

私は帰路へ着くのだ。








08/3/7up

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ