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□永遠に変わらない、愛のカタチ。
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最後の試合は、一生のうちで一番長く感じられた。
幸村との試合に勝利したあとは、チームメイトたちの歓喜の渦に飲み込まれ、彼らの熱が少し収まったところを見計らってリョーマはこっそりと輪から抜け出した。
「アンタは言ってくれないの? おめでとうってさ」
喧騒から少し離れたところに彼女は居た。
暗に冷たいよね、というニュアンスを含ませると彼女は口をもごもごと動かして呟く。
「お、オメデトウ…ゴザイマス」
リョーマはふっと微笑い、
「棒読み」
と指摘した。
「何だかリョーマくんと話すの久しぶり、な気が、する」
「そ? あぁ、でも。ずっとテニスばっかしてた気がする」
たどたどしくそう小首を傾げる桜乃に、リョーマもはた、とそう言った。
実際そのとおりで日本一になったリョーマが次に目指すのは世界であり、今後もテニス漬けな日々になるのだろう。
リョーマがぼんやりと未来のことに思考を飛ばしていると、
「あの、ね」
控えめな声で彼女が口を開いた。
「私、ね。
テニスをしてるリョーマくんが、好きだよ?」
ほんのりと頬を彼女の名のとおり、桜みたいに染めて。
しかし目には凛とした意思の強さを湛えて。
彼女は不意にそう言ったのだ。
リョーマは今度は不敵な笑みを浮かべ、
「それ、
最高の祝いの言葉、かも、ね」
そう言うと、リョーマは桜乃を思いきり抱きしめた。
勢い余って帽子が宙を舞い
桜乃の顔は耳まで紅く染まり
空がめちゃくちゃ綺麗に見えた。
了
08/3/7up