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□See you
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夜の闇にひっそりと溶け込むように、シドウは高層ビルの屋上に座っていた。
屋上側面ぎりぎりの所に腰掛け足をぶらぶらさせながら眼下に拡がる世界を眺める。
ばさり、と羽音がして後ろにリュークが降り立った。

「シドウ何食ってんの?」
問掛けに、シドウは手に持っていたものへ視線を落とす。
「チョコってやつ。美味いよ。リュークは何食ってんの?」
「りんご、食う?」

振り向けば、リュークも何やら食して居て、食べかけの林檎を掲げて見せた。
「じゃあ交換」

シドウがそう言い、二人はそれぞれ、シャリとかペキとか音を立てて食べてみた。

「おお。…りんごってやつも…美味い」
「不味くはないけど…甘い…」
「…」
「…」

結局お互い一口、口を付けただけで、返却することになった。
パキとチョコを食べながらシドウはリュークを見上げる。

「リュークは何で人間界に居るんだ?」
「あ?面白いじゃん」
「そう? 変なやつばっかりじゃん。人間って。ノートの使い方も間違ってるしさ」

呆れたようにシドウが言うとリュークは暫し沈黙してシドウを見つめていた。

「…人間界がお前みたいなやつばっかりだったらもっと平和だったんだろうなー」

ぽつりとリュークはそう言った。
「え? 何で?」
「あーでもそしたら俺また退屈になっちまうし」
「だから何で?」

完全にシドウを置いてけぼりにしてリュークは話を続けた。

「…お前さーノート取り戻したんだしさっさと帰れよな」

はー、やれやれと言わんばかりの態度にシドウはむっとして答える。
「むぅ…もとはと言えばリュークのせいなのに。…じゃーな!」

ざっと立ち上がって、そう言い捨てるとシドウはビルから飛び立ちすぐにその姿は見えなくなった。
リュークはそれを見送った後、独り呟く。

「あいつといるとこっちまで平和ボケしそうだからな」
「おい」

突然背後に再びシドウが現れ、リュークは驚いて飛び退いた。
「おわっ! 何だよ、なんか忘れ物か?」



「…お前も早く帰ってこいよ。じゃーな!!」




それだけ言うとシドウは今度こそ本当に死神界へ帰っていった。


リュークはまた暫し沈黙して

ほんの少し口許に笑みを浮かべる。





「…またな、シドウ」


リュークの言葉はNYの夜の闇に、静かに消える。




08/3/22up

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