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□Can you keep a Secret?
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超高級車の車内は静かだった。
エンジン音も車外の音も聞こえない。

今、永田は翼をモデルのバイトのためスタジオへ送る最中だ。



永田は、慣れた手付きでハンドルを手繰る。
そうして後部座席にゆったりと座り外を何とはなしに眺めている翼をバックミラー越しに見遣った。



翼が車に乗り込んでから、言うべきか否か悩んでいたことをポツリと口にする。

「翼様。ああいう事はどうかと…」


翼は少しうとうとしていたらしく、その控えめな声に首を傾げつつ顔を上げた。


「ああいう事…?」




永田が言わんとしていることを理解するまで少し時間が空き、翼はようやく「あぁ…あれか」と呟いた。



翼は小さく舌打ちした後、不機嫌極まりない顔をした。

「あれは一が無理矢理したことだ。不可抗力だぞ!」


翼は必死にそう訴えると先ほどの出来事を思い出し一気に眠気も覚めた模様。
実は先ほどまで学園のクラブハウスことバカサイユに翼は居たのだが、



その時に一が翼にキスしたのだった。
勿論、冗談で。

その日は一が愛らしいウサギに今すぐ触りたいと言い出して、あまりに煩いので翼が永田に手配させたのだ。

一はそれはもう喜んでウサギと戯れ、テンションの上がりきった一はウサギと翼に親愛の情を込めてキスをした。

一にとっては冗談半分、お礼半分らしいのだが翼が切れたのは言うまでもない…。


その光景を見てからというもの、永田の心中は穏やかではない。


「永田、何か怒ってないか?」
「…いいえ」
「いや、怒ってるだろう、それは」

感情は隠したつもりが、あっさりと見破られ、永田はこほんと咳払いをする。
そんな永田を面白そうに観察したあと翼は意地悪く言った。


「フッ、さてはヤキモチというやつだな?」
「私はそのようなことは一切思っておりません」

微かに語気を荒げる永田に翼は全てを悟った。



暫くの車内の沈黙のあと。
翼が真面目な声が永田の耳へと届いた。



「永田、お前は意外とバカだな。それでも真壁財閥会長とその跡取り息子の秘書か?

俺がキスしたい相手は一人しかいないぞ?」





バックミラーを確認しなくとも翼が呆れた顔をしていることは想像出来た。
永田は、前方だけを見据え口を開く。





「そのお相手とは?」



「もちろん…

Secret、だ」







翼は魅惑的な声音でそう呟き、バックミラー越しに永田と目が合うなり、妖艶な笑みを浮かべてみせた。










08/2/25up

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