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□それは特別。
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「青島くん、今日ご飯食べに行こ?」
私は回転椅子にすわったまま、勢いよく後ろの席の青島くんに近づくとそう言った。
勢いあまって止まりきれずに青島くんにぶつかってしまった私に彼は苦笑いだ。
そうして、じっと私の顔を覗き込んだ。
「すみれさん…ストーカーは捕まったのにまだ怖いの? 俺でよかったらいつでも付き合うよ」
「青島くんってさぁ!」
「何?」
急に声を荒げた私に、青島くんは不思議そう。
私は続きをものすごく不機嫌そうに言った。
「優しいんだよね!」
「いや、そんな怒りながら言われても。何怒ってんの?」

全くもってわかってない。

「被害者には優しいんだよ、青島くんは。雪乃さんの時だってそうだった」
「はい?」
「私は、もうあんなストーカーのことなんてとっくに克服してんの!」

確かに、犯人が捕まるまでは、とても怖かった。
けれど、自分でけりをつけなければ私の中で事件は終わらない。
だから精一杯踏ん張って、犯人と向き合ったんだ。

今はもうなんの恐怖も不安も感じない。

青島くんはほっとした顔になった。
それから不意に笑顔になって。

「あ、そう。じゃあさっきのはもしかしてデートのお誘いだったりする?」

へへっと子供っぽくて爽やかな笑いかたを彼はする。
それが私はけっこう好きだ。
だけど。
気づくの、遅いよ。
私はむすっとしたまま答えた。
「だったりする」
「なんだ、そうならそうと言ってよ。変な心配しちゃうじゃない」

「青島くんが深読みしすぎなのよ。で、返事。」
「もちろん、喜んで」


その一言にようやく私は笑顔になった。

ねぇ。
ワガママかもしれないけど他の誰かに優しくしないで。
私だけ特別扱いしてよね。

「当然、青島くんの奢りよね?」
「給料日前なのにそういうこと言いますか。屋台でラーメンじゃだめ?」
「だーめ」
「はぁ。しょうがないな〜。ほら、行くよ?」

私はそのおおきくてゴツゴツした手を掴んだ。
離れないようにしっかり掴んだ。







08/4/26up

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