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□毒と花
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「こ、これは巷で噂の超高級宇治抹茶ロールケーキ!!」
弥子は探偵事務所に現れた笹塚から手渡された紙袋を開けると、そう言い放った。
弥子はすかさず涎を拭う。
「あー、うん。弥子ちゃんにはいつも世話になってるから…差し入れ? かな」
いつものように寝起きのようなテンションで笹塚は応じる。
「ありがとう、笹塚さん大好き!!」
瞳をキラキラと輝かせてそう言った弥子に、笹塚は思わず固まる。
「あのさ…弥子ちゃん、誰にでもそんなフレンドリー?」
「え?」
「壁がないっていうか…」
笹塚のぽそっと言った一言に、弥子がそうかなぁ?と唸っていると笹塚は、ふっと微笑した。
「それ、助手サンとどうぞ。じゃあまた」

え、あ、う、と弥子が返事をする間もなく笹塚は探偵事務所をあとにした。
助手サンとどうぞ、か、と弥子はネウロを見やる。
ネウロは回転椅子に座って弥子に背を向け、興味なさそうに窓の外を眺めていた。

「ねぇ。ネウロも超高級宇治抹茶ロールケーキ食べる?」
「誰がいるか」
弥子の問いかけにネウロはそのままの姿勢で即答した。
「そうだよね。でもさ、せっかく笹塚さんが持ってきてくれたんだよ?」

そう弥子が言うと、ネウロはゆっくり椅子の向きを変え、弥子に向きなおった。ものすごく笑顔で。
「そうだな。貴様がそこまで言うなら食ってやらんこともないぞ?」
「え」

ぱく。

一瞬本来の姿に戻ったネウロはそのロールケーキを一口で丸飲みにしてしまった。

「あぁっ!! ひどいネウロ! 全部食べちゃうなんて!!」
「ひどくない。あの刑事も言っていただろう。誰にでも友好的なのは問題だぞ」
「? 私が誰と仲良くしようがネウロには関係ないもん」


弥子がそう反抗的に答えるとネウロは一瞬押し黙る。
それからふむ、と何かを思いついた様子で指を顎にかけた。

「ヤコ…。これから笹塚刑事が持参した差し入れは、この我が輩が全て食ってやるぞ」



「アンタ食べ物興味ないくせに…なにその嫌がらせ…」

げんなり顔の弥子を見るとネウロはようやく満足げに笑った。






08/05/11up

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