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□一緒に眠ろう
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あたたかな陽気の昼下がり。
相も変わらず探偵業に熱中しているLをお茶に誘いに、真希は彼の仕事部屋を訪ねた。
こんこん、とノックしてみたものの部屋は静まり返り、何の応答もない。
しかたなく、真希はドアノブをそろりと回した。
「L? 入るよ?」
部屋の中には日が程よく差し込んでいて、彼はその中にいた。
パソコン机も、テーブルとソファの上もとにかくたくさんの書類や資料が散乱している。
何度、片づけてと注意してもなかなかLは聞いてはくれなかった。
床にまで散らばった書類を数枚、真希は拾いながらLのもとまで行く。
「こんなところで寝てると風邪引くよ?」
Lはソファに座ったまま、すぅすぅと寝息をたてて眠っていた。
真希の気配や声にも動じず、起きそうにないので、真希は寝室から毛布を持ってきて彼にそっとかけてやった。
しばらく彼の寝顔をなにげなく観察していると、真希も不意に睡魔に襲われた。
あたたかな日差しに、すぅすぅと眠っているLの深い呼吸を聞いているうちに睡魔が伝染したかのように真希はぱたりと眠りに落ちた。
かさり、と小さな紙の擦れる音がして真希は目を覚ます。
「んー…あれ? 起きてたんだ」
目を擦りながら、真希はぼんやりした声で書類に目を通していたLにそう言った。
「はい。つい先程起きたところです」
視線は書類上を滑りながらLはそう答えた。
「L、こんなところで寝ちゃだめじゃない。風邪、引くから」
少しずつ覚醒してきた頭で真希がそう言うとLはこくりと頷いた。
「そうですね。でもそれはあなたも同じですよ?」
そう言われて真希は、苦笑した。
「ほんとだね。でもLがあんまり気持ちよさそうに眠ってたから、つられちゃった」
ふふっと屈託のない笑顔を向けられて、Lは少し真希の顔を見つめていた。
そして、ゆっくり口を開く。
「では、」
Lは言いながらソファに座りなおし、毛布をマントのように被る。
「次からは、こうしてください」
Lは自分の横に、人ひとりが毛布に入れるだけのスペースを空けて、そう言った。
Lの申し出に、真希は照れたように笑い、
「今から、そうする」
すっぽりとその中に収まった。
「真希さん、これではまた眠ってしまいます」
ちら、とテーブル上の書類に視線を送りつつLがそう言う。
仕事ももちろん大事だろう。
しかし真希にとってはLとこうして過ごすことのほうが何倍も大事なのだ。
忙しいLが相手だから、たまには。
「今日だけ」
その言葉にLはため息をついて、微笑んだ。
「全く…。真希さんには敵いません」
きっと一人よりあたたかいから、ふたりで一緒に眠ろう。
了
08/5/16up