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□この素晴らしき世界
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「あの時お前が止めてくれなければ、俺は死んでたな」
「そうなれば喜ぶのはキラだけだから」

あの時。
メロがSPK本部へ乗り込んで、ニアに拳銃を突きつけた時。

私はそう思った。

だから、あの時もそう言ってメロを納得させた。
けれど改めて穏やかな表情で、そんな風に彼に言われて私は自問したくなる。

それだけ?

本当に?

ああ。

どうしてだろう。

何時からだろう。

「メロ。私はあなたに死んで欲しくなかった。SPKとしての意思もあったけれど、私の個人的な感情も、あったのよ?」
「そう、なのか」

私はメロの顔を両手で優しく包み込む。
彼はこの顔に付いた痛々しい疵痕みたいなものを心に沈殿させている。
どうかその痛みが和らいで、何時しか消えてしまいますように。
そう願いながら私はメロの顔を擦り続けた。
メロはおとなしくされるがままになっていて、それから私の手を掴んで静かに制止した。
「お前に会えて、良かった」
メロは瞳を伏せ、穏やかな声でそう呟いた。
多分、今までで初めて見せた、本物の笑顔を浮かべて。

ねぇ、どうして出会ったのが今でこんな世界なんだろう?

「…何故、泣くんだ」つ、とメロの指が私の頬を伝う滴を拭う。
それで私はやっと自分が涙を流しているのに気づいた。

「どうして…こんな世界なのって本物の神がいるなら、そう言いたい気分だわ」

神気取りのキラのせいで、少なくとも私の世界は滅茶苦茶だ。
思わず口をついて出た、そんな宛てもない愚痴にメロは笑った。





「悲観するなよ。俺にとっては、ハル。お前がいるだけで素晴らしい世界だ」

さっき私がそうしたように、今度は彼の両手が私の頬を包み込む。
武骨だけどメロの手はとても温かくて、私はまた泣きたくなった。






08/5/25up

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